マーチングとは「音楽を身体や動きで表現する」ものである以上,通常の吹奏楽部と違って体育系的要素が濃くなるのは必然です。
練習開始前に活躍するいろいろな係の中で,こうしたGryシーズンに俄然忙しくなるのがSettingチーム。
実務を引き継いだばかりの上級生が,まだ前後左右すらあやふやな1年生を新たにチームに加え,MM(Marching基本動作練習)の準備にとりかかります。

塔南高校旧体育館の広さは縦約25m×横約15m。この体育館一杯にポイントを設営することからSetting係人生の第一歩が始まります。
メジャーを「コ」の字に形にセットして,直角を出しているところですね。
後ろに立っているのは,メジャー全体を見渡して歪みを補正する上級生。
OKが出るのを待っている係が腰の辺りに貼り付けているのがポイント用のテープです。
なにせ,体育館の使用時間はきちっと決まっているので,Settingは1秒たりとも無駄にしないよう,駆け出しの頃からうるさくしつけられます。

現在,旧体でポイントをうつ場合に使用しているのは,ホームセンターで売られているごく普通の養生用テープ。適度に粘着力が弱く,床面のワックス保護に優れているのが採用理由です。
校外の体育館を使用する場合には,体育館側の仕様に合わせて各種のラインテープを使い分けます。屋外なら通常は釘に荷造りヒモを房としてつけたものが中心です。
地面がアスファルトやコンクリートなら布ガムテープ,ホールの舞台ならビニールテープと,場所に応じた使い分けのノウハウとそれらの入手方法は,Setting係の基礎知識といっても良いでしょう。

さて,いよいよHornLineの面々が旧体へ登場。入念なストレッチの次は,マーチングに必要な筋力を鍛えるトレーニングに取り組みます。
管楽器は息を吹き入れて音を出すもの。そのブレス(息)を支える腹筋から,本日のトレーニング開始!

Percussion(打楽器)出身であり,現在はブレスとは直接関係がないドラムメジャー&Sub.ドラムメジャーの菊ちゃん&Sonyもメンバーのメニューにお付き合い。
え,それってダイエットの一環? またはメタボ予防かな?
いやいや,メンバーと同じ視点を持ち続けて,彼らの心情を汲んでいく立場として,メンバーが体験しているメニューをともに体験しておく,という崇高な使命感から,ということにしておきましょう。
でも,菊ちゃん,ちょっと苦しそうな表情ですよ。

これはつま先を拍に合わせて上げるメニュー。
何してんだか,みたいな感じに見えますが,実際にやってみて下さい。普段の歩行には使わない筋肉を酷使するため,けっこうプルプルくるメニューです。
さて,みんなの前でトレーニングを仕切っているのが現役高校生の「ストレッチリーダー」,通称“ストリー”です。
塔南ブラスやGryphonsのストレッチ&トレーニングメニューを研究・立案し,トレーニングの時間をプロデュースするため,いろいろな本を読んだり調べたりに余念がありません。
いざコンテ練が始まると,ラインをそろえるためのドレスや,ブロックを崩さないためのカバーなど,動き面の指導も担当します。

Gryでは「アップ4・ダウン4」とよばれるバランス練習がこれです。
ゆっくりと足を上げていき,外へ伸ばし,またゆっくりと下ろしていく。その間,上半身は楽器を構えたまま動かないように保つ,というメニューです。
1年生はまだまだグラグラ揺れたり,足が上げられなかったり・・・。でもまぁ,指導している上級生も1年前は同じ姿でしたからねぇ。
やはり1年の経験で大きく成長したんだなぁ,と上級生の成長ぶりを実感するのが,この時期の恒例です。

トレーニングもやっと終わってようやくMM。マーチングバンドらしい,歩く姿勢や歩幅をコントロールする能力を身につけるための時間となります。
出した足の膝はすらりと伸ばし,カカトから拍に合わせて足をつけ,つま先はしっかり上げる!
口で言うのは簡単ですが,日常の歩行とはほんの少し異なるだけに,今の時期では上級生と1年生の差は歴然としているようですね。

さぁ! ようやく一日の最大の楽しみ?であるお昼休み&昼食。
Gryは大人数なだけに,なかなか他PARTの人と親しく話をする機会がありません。これを補うために,組み合わせを決めて複数PARTが昼食タイムをともに楽しむことになっています。
本日お邪魔したのはGry最高のテンションとノリを誇って「アHr.(ほるん)ズ」の名を欲しいままにして,自他共に認めるムードメーカーであるHornパートと,対照的に理知的&しっとりを表向きは掲げているCl.パートのお部屋。
いやぁ,さすが,アHrズの面目躍如というところでしょう。
「今の画像,世界中に公開するけどいい?」という問に対して,力強く「ぜひ!」というお言葉はいただけましたが,“若気の至り”という語句が脳裏をかすめたのは歳のせいでしょうか?

午後からは「オペラ座の怪人」曲練をへてHornLineセクション合奏へ。
BatteryとPit.は,まだまだ譜面書きと,その練習に追われていて,管楽器と合わせるまでには至りません。Guardさんに旧体を半面,譲ってもらってDMのSonyさんが指揮をします。
まだまだギクシャクした感じの演奏は,この時期としては致し方のないところ。
これから吹き込んでいく中で,自分たちの想いや感情が,音符の一つ一つに込められていくことでしょう。

残りの半面では,Guardが練習しているわけですが,この頃からフラッグのデザインと製作も本格化します。
STAFFのSさんとN先生が「あーでもない,こーでもない」と試行錯誤しているのは,ショウの最後でカンパニーを飾る通称「デカ旗」の型紙作り。基本的なデザインは決まっていますが,それを実際に布の上で描いた場合のバランスや見栄えをチェックしているところです。

もう一方では,すでに製作された型紙に従って,届いた布地の裁断が始まっています。
初めてフラッグ製作を経験する1年生は,先輩諸氏の手先をじっと見つめて学習中。といっても直後には,自分たちの分担を自分たちで切り出すことになります。
Guardは華やかに踊るばかりではなく,こういった地味な作業も練習のうちということになりますね。でも,きちんと仕上がれば,フィールド全体のビジュアルを支配して,一身に注目を集めるのもGuardです。

さて,HornLineのBasicな一日(+おまけ)編,いかがでしたでしょうか。
次回は管楽器としてもっとも大切な仕事である「音を出す」部分をレポートします。